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キィィィィッ!!
ガチャ・・・・
まるで映画のワンシーンに出てくるような 宝石ディーラーよろしく白塗りの車を駆って さっそうと一人の女性が私の前に登場してきました。 そうです。彼女こそが、私が宝石ビジネスに 飛び込んで最初の取引相手となった人、宝石ディーラー のレズリーです。
すすめられるがままに車の中に招き寄せられ商談を することになったのですが、宝石が入っているアタッシュ ケースを開けるやいなや、私の目に飛び込んできたのは、 まさにこの世のものともいえぬきらびやかな光景でした。 アタッシュケースの四角い枠が、外界を遮断するかのように 存在し、それに区切られた空間だけが色とりどりの星屑を ちりばめた小宇宙といった感じで広がっていました。 見入っていた私に向かって
どうですか?
お気に召しましたか?
と、レズリーは問い掛けてきました。
ふぁ〜びゅらす・・・えくせれんと・・あんびりーばぼぉ・・・
形容しがたいくらいの美しい光景を目のあたりにして唖然としていた私は、 思いつく限りの「素晴らしい」を意味する英単語を連発していました。
時がたつとともに商談は進み、1つ1つと気に入った石を選んで いったのですが、日本円にして一泊800円ほどの宿の泊まっていた 私にとっていきなり何百万相当の買い物を今しなければいけない と思うと、今自分が直面している事の重大さに本当に足が震える思い でした。
今決断する!!
これが私にとってのブレイクスルーだったということは言うまでも ありません。売れるという保証などないものに、いろいろな思いに まみれて築き上げてきた全財産をつぎ込むということは、当時の私 にとっては、まさに人生最大の賭け。とてつもなく大きな決断に迫ら れているという現実とそれがもたらすプレッシャーが、津波の如く押し 寄せてきて、間近で宝石のことを一つ一つ丁寧に説明してくれている レズリーの言葉ですら耳に届いてないかのようでした。
そんな迷いの真っ只中を意識が走り抜けていくさなか、私の脳裏にこの日 のために今までがんばってきた記憶が走馬灯のように映し出されてきたのです。仕事から帰ってから夜遅くまで英会話の勉強をした事やオパール買い付けの資金を作るためサイドビジネスの化粧品を売りまわった事、そしてオーストラリアでの不慣れな一人旅の事などなど・・・・・ いくつもの記憶の断片が浮かんでは消え、また浮かんでは消えしていました。
このまま何も得ずには帰れない!
人生は一度しかないんだ!!のるかそるか!!
私は、その思いに背中を押されるようにして決断を下したのです。
OK,レズリー
この石とこの石、そしてこの石も・・・
自分の目とカンだけを信じてレズリーにオーダーを出しました。
ドッドッドッ・・・
アドレナリンが全身を駆け巡って鼓動が激しく胸を打ち鳴らし、 買い付け代金の200万円を彼女に手渡すときにはもう極度の緊張 と興奮からで全身から汗が噴き出ていたのを覚えています。 キャッシュと引き換えに宝石を受け取る私の手は、微妙にそして 小刻みに震えていました。汗ばんだ手を拭うためにポケットから ハンカチをとりだして手の平を拭うと、タイミングを見計らうよう に、レズリーが手の平を差し出してきました。 彼女は、商談の成功を意味する握手を求めてきたのです。それに応 じてこちらも手の平を差し出し、彼女と堅い握手を交わしました。
取引無事成立!!
彼女にお礼を言って、車を降りるとさんさんと照りつける南半球特有 の大きな太陽が私を出迎えていました。 私は、走り去るレズリーの車を一瞥すると、そのままホテルへの帰途に つきました。
かくしてはるばるオーストラリアまでやってきて念願のオパールをついに手に入れることができたのですが・・・・
ホテルに帰って買い付けた宝石を一つ一つ丹念に見ているとき、私の心はもうオーストラリアにはありませんでした。私の心ははるか遠く大海原を隔てたところに浮かぶ生まれ故郷日本へと馳せていたのです。
さて話は変わりますが、オパール、特にブラックオパールは世界で ライトニングリッジでしか採れないため値段が下がることはなく財産 としてもたれる方が増えています。日本人は、株や土地を買ったりして 財産を残そうとしますがオーストラリアの人は良い質のオパールを子供 たちに譲っていくそうです。そういう蓄財方法もオパールが身近に採れる オーストラリア特有の素敵な慣わしですね。
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